2018年 01月 08日
たった一人の反乱 丸谷才一 |
「....ぼくはこんな社会、否定してますよ。この、資本主義社会。しかしね、資本主義社会で生きてる以上、商業雑誌を拒否するわけにはゆかないじゃないか。当たり前だろ。だからいろんな週刊誌に写真を売っている....」
1972年発行の「たった一人の反乱」の中に登場する報道写真家の青年が、雑誌の懸賞に入賞し、授賞式でのスピーチの中で語った一節です。
資本主義社会で生きている反資本主義者のジレンマですね。
物語の中でこの青年は脇役ではありますが、私が一番共感したセリフでした。
全体的に「典型的な昭和」の一面を感じられる作品かと思います。
元官僚の男性が、元モデルの若い妻を娶ったことにより翻弄される自身の人生を語るという人間ドラマです。
時代(1970年代)もあるのかもしれませんが、物語を通してそこはかとない男尊女卑感を覚え若干の不快感が常に底辺にありました。主人公の男性についても、お上品な尊大さが鼻につく感じで、慌てふためくような事態が起きても沈着冷静で、全く感情移入できませんでした。女性の語り方が昭和な感じで少し違和感を感じますが、でもストーリーとしてはまとまっていて、長編小説ですが一気に読むことができる読みやすい作品でした。
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by nyaoma
| 2018-01-08 12:11
| 英訳されている和書